投資を始める前に|生活防衛資金はいくら必要か

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「投資を始める前に、生活防衛資金を半年分」。どこでも見る言葉ですが、なぜ半年なのかを説明している記事はほとんどありません。

結論から書きます。必要な金額は「何か月分」ではなく「自分にどの制度が効いているか」で決まります。会社員と自営業では、必要額が倍近く変わります。

  • 生活防衛資金の目的は「暴落のときに売らずに済むこと」。増やすためのお金ではありません
  • 会社員には傷病手当金と失業給付がある。収入がゼロになる期間は意外と短い
  • だから会社員は生活費の3〜6か月分が目安
  • 自営業・フリーランスは傷病手当金も雇用保険もない前提で考える。1年分は見ておきたい
  • 置き場所は普通預金。NISAの残高を生活防衛資金に数えないこと
目次

そもそも何のためのお金か

生活防衛資金は「万が一のため」と説明されがちですが、投資の文脈ではもっと具体的な役割があります。相場が下がっているときに、生活費のために投資信託を売らずに済むためのお金です。

インデックス投資が機能するのは、下がったときに持ち続けられるからです。持ち続けられない人にとっては、同じ商品でもまったく違う結果になります。そして持ち続けられるかどうかを決めるのは、メンタルではなく現金残高です。

だから生活防衛資金は「投資の準備」ではなく「投資の一部」だと思っています。リターンを生まない現金を持つことが、リターンを守ります。

会社員に効いている制度を確認する

必要額を出すには、収入が途切れたとき実際に何か月ゼロになるのかを知る必要があります。会社員の場合、穴は思ったより小さいです。

病気やケガで働けないとき:傷病手当金

健康保険の被保険者が、業務外の病気やケガで働けなくなったときの給付です。協会けんぽの説明を整理します。

項目内容
支給期間支給を開始した日から通算して1年6か月
1日あたりの額標準報酬月額の平均を30分の1にして、その3分の2
条件業務外の病気やケガの療養で休業/仕事に就けない/連続する3日間を含み4日以上就けない/その期間の給与がない
全国健康保険協会(協会けんぽ)の給付案内より作成

ポイントは1年6か月という長さです。しかも金額は標準報酬月額ベースでおおむね3分の2。完全に無収入になるのは待期の3日間だけで、そのあとは一定額が入り続けます。

ただし単純化しすぎないでください。待期の3日には有給休暇や公休日も含まれるので必ずしも「無給の3日」ではありませんし、休んだ期間に給与が出ている場合は支給されません(給与が傷病手当金より少ないときはその差額)。3分の2という数字も、実際の手取り感覚とはずれます。

ただし申請してから振り込まれるまでには時間がかかります。制度上いくら出るかと、口座にいつ入るかは別の話です。生活防衛資金は「制度が動き出すまでのつなぎ」としても効きます。ここを見落とすと、制度があるのに現金が尽きます。

仕事を失ったとき:雇用保険の基本手当

こちらは2025年4月に条件が良くなりました。厚生労働省の案内によると、

離職の理由給付制限
正当な理由がない自己都合退職(2025年4月1日以降の離職)原則1か月
同(2025年3月31日以前の離職)原則2か月
5年間のうちに2回以上、正当な理由なく自己都合退職した場合3か月
自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇3か月
厚生労働省の案内より作成。これとは別に、受給資格決定日から7日間の待期期間があります

会社都合なら給付制限そのものがありません。さらに2025年4月以降、リ・スキリングのために教育訓練等を受けた場合は給付制限が解除される仕組みもできました。

つまり自己都合で辞めた会社員でも、制度上の空白は待期7日+給付制限1か月の、おおむね1か月強です。ただし給付制限が明けてすぐ振り込まれるわけではなく、失業認定日を経て入金されるので、実際に現金が尽きる期間はもう少し長く見ておくべきです。

だから会社員は3〜6か月分でいい

ここまでを踏まえると、会社員が完全な無収入になる期間は1〜2か月程度で、その後も何割かは入ってくる、という構造が見えます。

それでも3〜6か月分を勧める理由は、制度でカバーされない部分があるからです。

  • 入金までのタイムラグ。制度が動くまで現金で食いつなぐ必要があります
  • 減った分の穴。3分の2では足りない固定費を持っている人もいます
  • 制度が使えない出費。家電の故障、引っ越し、冠婚葬祭、家族の事情
  • 転職活動が長引く可能性。基本手当の給付日数には限りがあります
月の生活費3か月分6か月分
15万円45万円90万円
20万円60万円120万円
25万円75万円150万円
30万円90万円180万円

ここでいう生活費は「止められない支出」だけです。家賃、食費、水道光熱費、通信費、保険料、交通費、奨学金の返済など。趣味や外食、旅行は、いざというときは止まります。手取り全額で計算すると必要額が膨らみすぎて、いつまでも投資を始められません。

自営業・フリーランスは前提が違う

同じ「半年分」を当てはめるのは危険です。理由は3つあります。

  1. 傷病手当金は健康保険(協会けんぽ・健保組合)の被保険者向けの給付です。国民健康保険で同じ給付を受けられるかは、加入している市区町村に確認してください。ここでは「無い前提」で組んでおくのが安全です
  2. 雇用保険がありません。仕事が途切れても基本手当は出ません
  3. 収入そのものが変動します。ゼロにならなくても半分になることはあります

加えて、翌年に住民税と国民健康保険料の請求が来ます。収入が落ちた年の翌年に、前年の収入に基づく請求が届く。これが自営業のいちばん厳しいところです。

なので生活費の1年分+納税用の資金を別枠で、が現実的な線だと思います。納税用を生活防衛資金と混ぜると、税金を払った瞬間に防衛資金が消えます。

どこに置くか

生活防衛資金に求められる条件はひとつだけです。必要になった日に引き出せること。利回りは要件ではありません。

置き場所すぐ出せるか評価
普通預金いつでもこれでいい
定期預金中途解約すれば可能手間が増えるだけ。分けたい人向け
個人向け国債(変動10年)発行から1年経てば中途換金可能1年待てる分だけなら可
投資信託・株式売却は数日、価格は変動生活防衛資金ではない

「普通預金では増えないのがもったいない」という気持ちは分かります。ただ、生活防衛資金が増えないことのコストより、必要なときに引き出せないことのコストのほうがはるかに大きいです。仮に年2〜3%で運用できたとして、100万円なら年2〜3万円。一方で暴落中に投資信託を100万円分売れば、損失はその何倍にもなります。比べる相手が違います。

ひとつ勧めたいのは生活費の口座と物理的に分けることです。同じ口座に入れておくと、じわじわ使ってしまいます。別の銀行に置いて、カードを持ち歩かないくらいでちょうどいいです。

よくある4つの間違い

1. NISAの残高を生活防衛資金に数える

「NISAはいつでも売れるから、あれが防衛資金でいい」。いちばん危ない考え方です。お金が必要になるタイミングと、相場が下がるタイミングは重なりやすいからです。不況で職を失うときは、たいてい株価も下がっています。

2. 貯まるまで投資を始めない

これも損をします。半年分が貯まるのに2年かかるなら、その2年は何も積み立てないことになります。現金を厚くしながら、少額で並行して積み立てるのが現実的です。月3万円貯められるなら、2万円を防衛資金、1万円を積立、といった配分でいいと思います。

3. 多すぎる

2年分、3年分と積み上げる人もいますが、現金は長期ではインフレに負けます。不安だから現金を増やす、を続けると、いつまでも投資が始まりません。目安を決めて、超えた分は投資に回してください。

4. ボーナス前提で計算する

ボーナスは業績で変わります。月々の給与だけで回る前提で組んでおくほうが安全です。

よくある質問

Q. 実家暮らしでも必要ですか?

金額は小さくて構いません。ただしゼロはお勧めしません。いま出ていく生活費が少ないことと、突発的な出費が起きないことは別です。実家暮らしでも数十万円は現金で持っておくと、選択肢が減りません。

Q. 共働きなら少なくていいですか?

片方の収入が途切れても家計が回るので、一般には少なくて済みます。ただし同じ会社や同じ業界で働いている場合は、同時に影響を受ける可能性があります。そこは割り引いて考えてください。

Q. 住宅ローンがある場合は?

固定費が大きく、止められないので、厚めに持ってください。家賃と違って「安いところに引っ越す」という逃げ道がありません。

Q. 貯まったあとはどうしますか?

金額を固定して、超えた分を投資に回します。生活費が変わったら(引っ越し、結婚、転職など)そのタイミングで見直せば十分です。毎月見直す必要はありません。

まとめ

  • 生活防衛資金の目的は下落時に売らずに済むこと
  • 会社員は傷病手当金(通算1年6か月・額面の3分の2)と失業給付があるので3〜6か月分
  • 自営業・フリーランスは1年分+納税用を別枠で
  • 計算に使うのは止められない支出だけ
  • 置き場所は普通預金。生活費の口座とは分ける
  • 貯まりきるのを待たず、少額で並行して積み立てる

ここまで整えたら、次は何を買うかです。インデックス投資とはと新NISAの仕組みをどうぞ。制度の優先順位はNISAとiDeCo、どっちを先に使うべきかにまとめています。

参照した情報(2026年9月12日に確認)
・全国健康保険協会「傷病手当金」
・厚生労働省「令和7年4月以降に教育訓練等を受ける場合、給付制限が解除され、基本手当を受給できます」
給付の要件・金額・期間は個別の事情により異なります。実際の受給可否や金額は、加入している健康保険や最寄りのハローワークにご確認ください。本記事は情報提供を目的としたもので、特定商品の勧誘ではありません。

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この記事を書いた人

RIMAWARIのアバター RIMAWARI 投資歴7年 / 35歳FIREを目指す会社員

「リマワリ」を書いているRIMAWARIです。東京でひとり暮らしをしている20代の会社員(映像・放送機器の法人営業)で、投資歴は7年。35歳でのリタイア(FIRE)を目標に、自分のお金で実際にやっている資産形成の記録と、その過程で調べたことをまとめています。資格は持っていないので、制度の説明は必ず一次情報にあたり、数字には「いつ時点か」を書き、デメリットを先に書くことにしています。

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